米国小口貨物免税措置「de minimis(デミニマス)」停止による越境ECの改善策とは?

執筆者 | 2025-08-28 | アメリカビジネス情報

ここ数年、日本では、国内に海外販売向けのECサイトを立ち上げ、海外から注文募り、日本から商品を小口貨物として海外の購買者に小包で商品を発送する「越境EC」ビジネスが発展してきました。2025年のStripeのレポートによると、越境ECで、米国顧客が日本のECサイトから購入した額は、約1.5兆円(約100億USD、為替レートによる)であると推定されています。 輸出商品は、主に、化粧品、食品、アニメ、ゲーム関連商品などのカテゴリです。

アメリカでは、800ドルまでの輸入貨物は、関税がかかりませんでしたが、2025年8月29日から施行される米国の「de minimis(デミニマス)ルール」の変更に基づき、その免税措置が停止されます。本記事では、今回のde minimis(デミニマス)ルール停止の背景と日本企業への影響を解説し、アメリカ現地発信の情報に基づき、越境EC事業者が検討すべき戦略をご紹介いたします。日本在住で小口取引を中心に米国向け越境ECを展開してきた事業者様の低コスト直送モデルを見直すきっかけになれば幸いです。

de minimisルール(小口貨物免税)の概要と背景

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Source:Sherwood

米国では、これまで800ドル以下の小口輸入品(主に郵便や宅配便経由)に対して関税や税金の免除が適用され、簡易通関が可能でした。これが「de minimisルール」です。しかし、2025年8月29日からこの免除が停止され、すべての低価値商品にも関税が課されるようになります。(品目(HS)によって関税率は異なる。関税検索ツール)停止期間は無期限で、関税の計算・徴収方式に移行的な特則があり、この定額方式を選べる期間が発効から6か月間となります。

このde minimis ルールが停止された背景には、電子商取引(EC)の爆発的成長、特に中国発プラットフォーム(TemuSheinなど)による出荷増加が挙げられます。2024年のde minimis出荷は、上記グラフが示す通り、13億件を超え、違法薬物や偽造品の流入、国内産業の競争力低下が問題視されました。トランプ政権は、2025年7月30日に、すべての国から流入する小口貨物の免税措置(de minimis)を停止する大統領執行命令(Executive Order “Suspending Duty-Free De Minimis Treatment for All Countries”)を発表し、2025年8月29日以降は、このルールがグローバルに適用され、日本からの輸出も対象となります。 米国税関・国境警備局(CBP)の公式発表によると、この変更は国家安全保障と経済保護を目的としており、輸入品の監視を強化するものです。 日本郵便はすでに米国向け一部サービスの受け付けを停止しており、物流混乱が予想されます。

日本越境EC事業者への影響:小口取引の限界

international shipping

一般的に、日本在住の事業者にとって、この変更は深刻です。従来、800ドル以下の商品を直送で低コスト販売できていましたが、今後は:

  • 関税負担の増加:商品価格の15%程度の関税プラス手数料が発生。利益率が大幅に低下します。
  • 物流の制限日本郵便の停止により、DHLやFedExなどの高額サービスに頼らざるを得ず、配送遅延やコストアップが避けられません。
  • 顧客離れのリスク:価格上昇や遅延で、米国消費者が競合他社(中国系EC)に流れる可能性大。
  • 運用負担:税関申告の複雑化で、小規模事業者は対応しきれず、事業縮小や撤退を迫られるケースも。

特に、ファッション、美容品、アニメグッズなどの低価格帯商品を扱う中小企業は打撃が大きいでしょう。CNNの報道では、小規模事業者がこの変更にスクランブル対応を強いられていると指摘されています。 また、The New York Timesによると、オンラインセラーは中国からの供給コスト増加に混乱をきたしており、類似の影響が日本事業者にも及ぶ可能性が高いと推測されます。

アメリカ向けの非小口配送モデルの見直し

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de minimis変更をチャンスに変えるため、多くの専門家がアメリカ移管戦略を推奨しています。これは、単なる物流調整ではなく、ビジネス全体の再設計といっても過言ではありません。

ECサイトのアメリカ移植

既存の越境ECサイトをアメリカサーバーやドメインに移管し、SEO最適化された英語サイトを構築することで、顧客への商品の配送など信頼性を向上させます。具体的には、ShopifyやWordPressなどのオウンドメディアをアメリカ国内に立ち上げ、販売から配送まで、すべて米国内で完結するようにECサイトを構築するやり方です。しかし、この場合は、州税であるSales Taxや、連邦税である所得税、法人税などを払う必要があり、納税のために米国内の法人を設立する必要があります。一方、AmazonやeBay等のマーケットプレイス経由は多くの州でプラットフォーム側がSales Taxの徴収と納税を代行してくれますので面倒な手続きは必要ありません。しかし、その代わり、一定の利用手数料を払ったり、顧客との接点が薄れるため、本格的に自社商品をアメリカで展開したいなら、マーケットプレースの販売は継続しつつ、いずれは、米国内にオウンドメディアを立ち上げるほうが賢明な選択です。

JU Marketingを運営するSeki Water System LLCは、アメリカテキサス州で登記された会社ですので、ご相談いただければ、ECサイトの代行運用などのご相談に乗ることが可能です。詳細は、弊社までお問い合わせください。

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非小口配送モデルの構築:米国倉庫を活用

小口直送をやめ、商品をバルクで米国倉庫に輸入・在庫化すれば、発送コストを劇的に節約することが可能となり、エンドユーザーへのサービス向上、配送料の削減などを実現することが可能となります。米国内在庫を行うためには、AmazonのFBA(Fulfillment by Amazon)や第三者物流(3PL)プロバイダー(例: ShipBobなど)と連携し、米国内発送を実現します。 USTRの報告書では、サプライチェーンの再構築としてこうした在庫移管が効果的とされています。 また、Foreign Trade Zones(保税倉庫)活用で関税を最小限に抑え、初期投資を軽減可能です。 さらに、こうした倉庫業者への窓口業務や商品の倉庫管理を代行するビジネスも存在し、在庫管理から発送、返品対応までを委託できるサービスが利用可能です。これにより、日本企業は現地運用をスムーズに進められます。

ビジネスモデルの全体最適化

  • 価格戦略:関税分を吸収したバンドル販売や高マージン商品シフト。
  • マーケティング強化:英語SEOとコンテンツ作成で、検索エンジン経由の集客を増やし、依存を分散。
  • 多角化:米国市場だけでなく、欧州やアジアへの拡張も視野に。Brookings Institutionの分析では、こうしたグローバル戦略がeコマースのレジリエンスを高めると指摘されています。

このアプローチにより、物流コストを20-30%削減し、配送時間を2-3日に短縮可能とされています。

まとめ:今すぐ行動を!専門家のアドバイスを参考に

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de minimisルールの変更は、越境ECの転機です。小口取引に頼っていた事業者こそ、一般的なアメリカ移管戦略で競争優位を築けます。こうした倉庫管理代行などを含めたサポートをお考えの方は、JU Marketingでもお手伝い可能です。お気軽にお問い合わせください。

(この記事は、2025年8月28日時点の情報に基づいています。最新の規制は米国税関・国境警備局(CBP)の公式サイトでご確認ください。)

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