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多くの日本企業が見逃しているマーケティングスキルの盲点とアメリカ企業の考え方
今回は、現在アメリカ展開をしている日本企業のビジネスパターンのお話です。日本を代表する企業のトヨタや京セラもアメリカでのビジネスをローカライズしているように、現地の取りまとめ役である駐在員が多く活躍されていますね。日本(本社)より派遣された駐在員は、ジェネラルマネージャーとして人材の採用活動からセールスまでを一貫して行っているパターンが大半だと思います。
実は、このビジネスパターンこそが日本企業のマーケティングスキル不足を引き起こしていることにお気づきでしょうか。これは、日米のマーケティングの取り組み方がまったく違う部分であるとともに、日本企業が知らないうちに陥っている盲点なのです。その点に気づくことができれば、アメリカ進出に必要なスキルをどのように補えばいいのかがご理解できると思います
アメリカの求人票に見るデジタルマーケティングの専門性
さて、日本企業が抱える盲点とは……。ずばり、「デジタルマーケティングに関する知識」です。特にWebマーケティングに必要なSEO(Search Engine Optimization)などへの取り組み方が、顕著に不足していると考えます。
ここで私の経歴を簡単に申し上げますと、日本の大手コンピュータ会社にて営業職を10年間経験し、コンピュータービジネスを追求するべく退職後に渡米しました。アメリカの大学院でMBAを取得し、さらに日本企業・日系のアメリカ法人で営業のキャリアを積みました。つまり、日本とアメリカにある日本企業を長年経験してきたわけですが、ずっと疑問に感じていたことがあるのです。
それが、
「アメリカ企業と日本企業のマーケティングに対するJobの考え方の違い」です。
日本企業の場合は、新規顧客開拓(リードジェネレーション)を行うにあたり、営業(セールス)とマーケティング担当(マーケター)が分かれていません。新たな市場開拓のためにアメリカに進出して、当地アメリカで新規顧客開拓のための人材を採用する際に、Job Description(求人票)を作成しますね。多くの場合は、人材斡旋をするエージェントに依頼し人材を探すと思うのですが、この際に、Job のタイトルが「新規事業開発担当者(Business Development)」というポジション名だったり、または、「マーケティングマネージャー(Marketing Manager)」という肩書だったりします。
日系企業とアメリカ企業の求人票(Job Description)の違い
これは、アメリカで事業展開する日系企業の実際のJob Descriptionを見るとよくわかります。某日本企業がアメリカで実際に公開していたものを例にとって見てみましょう。
日本企業の求人票(Job Description)
仕事内容
新規ビジネス開拓しリードジェネレーションを積極的に展開するために、マーケティングマネジメントスキルを持つ、経験豊富なマーケティングディレクターを募集。このポジションでは、自立的かつ積極的にマーケティング施策を実践する能力が求められます。さらに、チームやマーケティング活動、仕事全般を管理し、戦略的にマーケティング業務を実践できる人材を優遇します。
主な職務内容
• 市場調査に基づいて、ターゲット層を特定する
• 潜在顧客(見込み客やリード)発掘、顧客層を新規創出する
• 顧客獲得(リードジェネレーション)、KPIに基づいたマーケティング目標の策定
• 競合他社の動向を調査し、効果的なマーケティングを実践する
• ソーシャルメディアへの投稿、ウェビナーなどのコンテンツの制作・編集
• マーケティングソフトウェアツールなどを用い、ROIを管理する
• 企業のデジタル、ウェブサイト、ソーシャルメディアなどの管理
• ソーシャルメディアのトラフィックを監視し、一般の人々のブランド認識を測定する
• Eメール、ソーシャルメディアへの投稿、ランディングページの品質・テストできる能力
• マーケテイングキャンペーンの結果を詳細に分析し、競合他社に対抗できる戦術を展開する
• マーケティング活動とその結果について、報告書を作成し、経営側に報告する
• 必要に応じて、会社や業界の展示会やイベントを企画し、運営する。
必要な資格と経験
• 5年以上のマーケティングマネジメントの経験
• テクノロジー業界、サービス業界での経験を優遇
• 日本語・英語バイリンガル。日本本社と頻繁に連絡を取るための読み書きや会話ができること
• 優れた計画性、組織力、フォローアップ能力
• ビジネスを改善するために包括的な提案ができる能力
• 企業のウェブサイトやソーシャルメディアプラットフォームを管理した経験があり、編集・更新ができること
• チームを効果的に管理する能力があり、強い仕事に対する意欲があること
• 周囲の環境変化に柔軟に対応し、目標達成のために得た知識を活用する能力と意欲があること
• 高いレベルの顧客サービス、リーダーシップ、モチベーションをビジネスや社会のリーダーに提供する能力を持つ、強力な人間関係構築スキル
• 自分で率先して仕事ができる能力、およびチームを統率できる能力
• 会社のオフィス、顧客訪問、または会社の業界展示会などの企画・立案・運営能力
• 中級から上級のエクセルとパワーポイントのスキル
• マーケティングまたは関連分野の学士
一方、アメリカ企業の求人票は、明確にマーケティングのスキルや求められる具体的な経験などが記載されています。
アメリカ企業の求人票(Job Description)
仕事内容と要件
マーケティンマネージャーは、マーケティング戦略を企画立案し実行しながら、全体的なビジネス目標に貢献し、ウェブコンテンツ、Eメールマーケティング、検索エンジン最適化/マーケティング、その他のオンラインメディアイニシアティブを含む(ただし、これらに限定されない)オンライン/デジタルイニシアティブを管理する責任があります。
重要な機能と責任
- SEO、SEM、PPCの指標や分析を活用して、顧客や会員のインサイトを得る。他のダイレクトマーケティング活動とウェブをシームレスに統合する。
- SEOの豊富な経験を活かし、検索プラットフォーム(Google、Bingなど)でのサイトの有機的な順位を上げるための戦術を開発し、最適なパフォーマンスを確保する。
- デジタルエージェンシーと協力し、SEO/SEM戦略を通じてオンラインプレゼンスを強化し、トラフィックとコンバージョン率を向上させる。
- すべてのデジタルマーケティングイニシアチブに関する包括的なレポートを作成、提示し、今後の変更やキャンペーンを推進するための重要な洞察を提供する。
- マーケティングのトレンドを把握しながら、リードジェネレーションを高めるための新しいクリエイティブな戦略をウェブページに提案する。
- オンラインビジネスリストやサードパーティのウェブサイトのコンテンツの日々のサポートを管理。
- 大規模サイトやトラフィックの多いサイトを対象に、インデックスやページランクを上げるための戦略を立てる。
- 有料広告チャネルとオーガニック検索最適化を通じた新たな成長機会の評価
- ウェブサイトのトラフィックを分析し、オンライン体験を向上させる(A/Bテスト、コンバージョン/勝利の追跡など)。
- PPC/ディスプレイキャンペーンの管理と、それに伴うランディングページやウェブサイトのコンテンツ戦略を支援する。
- マーケティング戦略および分析チームと協力して、メンバーとのコミュニケーションやメンバーの購買行動に対する統合的なアプローチを実施し、継続的な改善のために利用パターンや傾向を取り入れる。
- その他、割り当てられたすべての職務(注:必須の機能や責任は、予告なく変更されたり、新たに割り当てられることがあります)。
必要条件
• 学士号または同等の経験。
• 3~5年の職務関連経験を有すること。
• 優れた問題解決能力とプロジェクト管理能力を有すること。
• Google Analytics(または同様の分析プラットフォーム)の経験とGoogle AdWordsの認定。
• 優れたコミュニケーション能力とプレゼンテーション能力を持ち、複数のキャンペーンを同時に管理できること。
• エネルギッシュで、細部にまで気を配れる方。
• データ分析(トラッキング、パフォーマンススコアリング、レポーティングなど)の経験。
• メールマーケティング、マーケティングオートメーション、ソーシャルメディアの経験がある方は優遇します。
上記のJob Descriptionをご覧いただき、日米のマーケティングに対する考え方の違いにお気づきいただけましたでしょうか。
日本企業のJob Descriptionは、「マーケティングマネージャー」という肩書が記載されています。しかし、デジタルマーケティングを含めた業務遂行スキルを求めていながら、それが全般的な目標を言及するのみ。実行するための「必要スキル・経験」といったものがまったく言及されていません。
一方、アメリカ企業のJob Descriptionを見ると、赤字で示したSEM、SEO、 PPC、Google Analytics、オーガニック検索の最適化など、より具体的に求められるスキル・経験がきちんと言及されています。ここに、日本企業の「マーケティングに対する考え方の盲点」が顕著に表れているのです。
つまり、この日本企業のマネージャーはおそらくマーケティング知識が乏しいまま、Job Descriptionを公開してしまったのではないかと推察します。知識があれば、アメリカ企業のJob Descriptionのように求める人材の具体的なスキルを記載していたはずです。
断言するようで恐縮ですが、この日本企業のJob Descriptionではデジタルマーケティングに特化した人材を発掘することは非常に難しいと言えます。そしてこの時点でつまずいていたら、デジタルマーケティングをより専門的に遂行することもほぼ不可能でしょう。では、日本企業が正しくデジタルマーケティングを遂行するためにはどうしたらよいのでしょうか?
マネージャー自身がマーケティングを学ぶ
ずばり、答えは、アメリカで新規開拓をするマネージャー自身がデジタルマーケティングの仕組みを学び、SEOなどの全体的な仕組みを知ることにあります。管理する役割のマネージャーは、実際に業務を遂行する具体的なノウハウまでは不要です。しかし、適材適所の採用活動、デジタルマーケティングでリードジェネレーションを行うためにどのような知識・経験をもった人材を求めたらよいかは理解する必要があるでしょう。
Webマーケティングの知識不足を補うための行動。それは、デジタルマーケティングに関連した情報収集を行うことが最も早い近道です。まずは自社ウェブサイトの集客率、集客の流入元、検索エンジン上における検索結果表示回数とクリック数などのパフォーマンス調査からスタートします。すると問題点が浮き彫りになり、具体的な対策を打つことできるのです。
具体的な対策が見えてくれば、解決するための知識・経験といったものがあぶりだされてきます。それをもとに採用活動を行えば、より具体的なマーケティング活動を行うことができるようになるのです。
デジタルマーケティングができる人材を育てる
アメリカの大手リクルーティングサイトGlassdoorによるとのデジタルマーケティングマネージャーの平均年収は、およそ$120,000(日本円で1300万円)です※1。かなり高い報酬のJobのため、多くの企業ではそうした人材を採用することにかなり慎重になってしまうはずです。
日本企業は戦後、自社で人材を育てて発展をしてきたという文化があります。その特性を次世代に活かす時代が「いま」です。
私も最初に勤務したコンピュータ会社で“セールスのいろは”を学びました。いまもその精神は、自分のなかに浸透しているので営業職を重々理解しています。したがって、デジタルマーケティングができる人材を社内で育てながら組織を構築していくことをおすすめします。
時代の変化・進化は激しいので、いままで使えたものが、1年後には使えなくなるかもしれません。デジタルマーケティングに対する取り組みも付け焼刃の対応ではなく、しっかりと腰を据えて人材を育てていくということが必要だと思います。
デジタルマーケティング体制を構築するにあたり必要なのが「情報元」です。常に最新の情報にアンテナを張り、検索エンジンなどが行う頻繁なアルゴリズムの変更(検索結果の方針の変更)などに柔軟に対応できる体制を整えることが重要です。特にデジタルマーケティング関連の最新情報は、英語で書かれていることが多く、英語の情報源を常にチェックしておく必要があります。このようなときに利用できるのが弊社のようなコンサルタントです。
JU Marketingでは、日々変化するデジタルマーケティングの最新情報を英語で入手し、クライアント様に月次でご報告をしています。さらに、ウェブサイトの現状調査、問題点を同時に行い、常にWebマーケティングにおける問題点を把握することができます。問題点に対しては、専門的な見地からアプローチすることが可能です。
デジタルマーケティングの取り組みを、クライアント様の社内で一緒に考え、対策を取り組むことができます。そのため、この活動そのものが企業のマーケティング人材の育成にもつながるのです。
まとめ
採用活動という見地から、アメリカ企業と日本企業とではデジタルマーケティングに対する取り組み方に大きな違いがあることをお話ししました。採用活動の時点で、管理職のデジタルマーケティングの知識不足が発生していることがお分かりいただけたと思います。
アメリカで活躍する多くの日本企業にとって必要なことは、スキル不足を補うこと。アメリカ企業と同等のデジタルマーケティングを遂行することができれば、より新規リード開拓がスムーズになることと思います。
そのために、経営者やマネージャーの方自身がデジタルマーケティングの概要を、まず、知り、そのうえで採用活動や人材育成において、デジタルマーケティング施策を腰を据えて実践していくことが、今後の企業活動において重要といえます。
もし、ご質問などがございましたら、下記コンタクトリンクよりご連絡ください。30分のフリーディスカッションでお客様のウェブサイトを分析、課題や改善点などをご提供いたします。